相続不動産の「売却」と「活用」
それぞれの具体的な方法、手続き、注意点などを
わかりやすく解説します

この家や土地をどうしよう

兄弟で揉めずに分割したい

兄弟で揉めずに分割したい
相続した不動産は、そのまま放置すると固定資産税等かかり続けるだけでなく、建物の劣化や管理の手間、防犯上のリスクなども生じます。
適切な対応をとり、資産としての価値を活かすことが重要です。
主な選択肢としては、「売却して現金化する」方法と、「賃貸や駐車場経営などで活用する」方法があります。
どちらが良いかは、不動産の状況、相続人の皆様のご意向やライフプランによって異なります。
遺産の分割方法

現物分割
不動産をそのまま特定の相続人が相続する方法。公平な分割が難しい場合があります。

換価分割
不動産を売却し、得られた現金を相続人間で分割する方法。公平ですが、売却の手間と時間がかかります。

代償分割
特定の相続人が不動産を相続する代わりに、ほかの相続人に自己資金で代償金を支払う方法。不動産を残せますが、相続人に支払い能力が必要です。

共有分割
不動産を複数の相続人の共有名義にする方法。一旦は公平ですが、将来的に売却や活用が困難になるリスクがあります。
売却までの基本的な流れ
1.相続手続き
- 遺言書の有無を確認します。
- 相続人と相続財産を確定させます。
- 遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、誰が不動産を相続するか、またはどのように分割するかを決定します。(換価分割の場合は売却後に現金を分割)
- 決定に基づき、法務局で不動産の名義変更(相続登記)を行います。※2024年4月から相続登記は義務化されており、原則3年以内の申請が必要です。
2.売却準備
- 不動産会社に査定を依頼し、売却価格の相場を把握します。
- 相続不動産に特化した信頼できる不動産会社を選び、媒介契約を結びます。
- 売却に必要な書類(登記済権利証または登記識別情報、固定資産税評価証明書、本人確認書類、実印、印鑑証明書など)を準備します。
3.売却活動
- 不動産会社が販売活動(広告掲載、内覧対応など)を行います。
- 購入希望者が見つかったら、価格や条件を交渉します。
4.契約・決済・引渡し
- 売買契約を締結します。
- 飼い主から売買代金を受け取り(決済)、物件を引き渡します。
- 所有権移転登記を行います。
5.確定申告
- 売却によって利益(譲渡所得)が出た場合は、翌年に確定申告が必要です。(※物件購入時の契約書など取得費の分かる資料準備)
相続不動産の活用
不動産を維持しながら収益を得たい場合や、将来的に利用する可能性がある場合に選択される方法です。ただし、活用には初期投資や管理の手間、空室リスクなどが伴います。
☑ 相続した建物の活用方法

自分で住む
最もシンプルな活用方法です。リフォームが必要な場合もあります。

賃貸に出す
- 現状のまま賃貸:状態が良ければ、比較的少ない初期投資で始められます。
- リフォーム、リノベーションして賃貸:価値を高めて、より高い賃料や安定した入居者確保を目指します。費用対効果の検討が重要です。
- トランクルームとして貸す:居住用ほどの設備投資や管理が不要で、比較的始めやすい活用法です。都市部などで需要が見込めます。
☑ 相続した土地の活用方法

アパート・マンション経営
高い収益性が期待できますが、多額の初期投資と専門知識が必要です。リスクも伴います。

店舗・事務所などの事業用建物を建てる
立地が良ければ高い収益が見込めますが、テナントが見つからないリスクもあります。

太陽光発電
土地の広さや日照条件が合えば、売電による収入が期待できます。

戸建て賃貸経営
アパート経営より初期投資やリスクを抑えられます。ファミリー層などの需要が見込める立地に向いています。

駐車場経営
初期投資が比較的少なく、管理の手間も少ないですが、収益性は立地に大きく左右されます。

自家利用(家庭菜園など)
収益性は低いですが、管理の手間を抑えつつ土地を維持する方法です。
☑ 活用方法を選ぶ際の考慮点
☑ 立地
☑ 初期費用と収益性
☑ 管理の手間
☑ 法規制
☑ 税金
最も重要な要素です。周辺環境、交通アクセス、賃貸需要、競合などを調査します。
どの程度の投資が必要で、どのくらいの収益が見込めるか、リスクはどの程度かをシミュレーションします。
自身で管理するか、管理会社に委託するかを検討します。
用途地域や建築基準法など、法的な制約を確認します。
固定資産税、都市計画税、所得税などがかかります。賃貸住宅を建てると固定資産税や相続税評価額が軽減される場合があります。
売却か活用かの判断基準
どちらを選ぶべきかは、以下の4点とメリット、デメリットを
総合的に考慮して判断しましょう
1
2
3
4
不動産の状況
相続人の状況
市場の状況
税 金
立地、状態(築年数、劣化具合)、広さ、法規制など。
資金状況、不動産を管理できるか、将来利用する予定はあるか。
不動産価格や賃料相場の動向。
売却した場合、活用した場合それぞれの税負担を比較検討。
メリット
相続不動産を持つことの主なメリットは以下の通りです。
- 資産の取得
不動産という大きな資産を、購入費用なしで取得できることには大きなメリットあり、状況に合わせた的確な判断をとることで将来的な資産形成の基盤となり得ます。 - 収益化の可能性
賃貸物件として貸し出すことで、家賃収入という不労所得を得られる可能性があります。アパートやマンション経営、駐車場経営など、活用方法によっては安定した収益源となることもあります。 - 売却による現金化
不動産を売却することで、まとまった現金を得ることができます。特に価値の高い不動産であれば、大きな利益(キャピタルゲイン)を得ることも可能です。 - 自己利用
ご自身やご家族の住居として利用したり、セカンドハウスとして活用したりすることができます。
節税効果(場合による): 賃貸経営を行うことで経費計上が可能になったり、特定の条件下で相続税評価額が軽減されたりするなど、税制上の優遇措置を受けられる場合があります。 - 精神的な価値
故人との思い出が詰まった場所である場合、精神的な繋がりや満足感を得られることがあります。
デメリット
一方で、相続不動産には以下のようなデメリットや注意すべき点も存在します。
- 税負担
相続時には相続税、所有している間は固定資産税や都市計画税がかかります。また、売却して利益が出れば譲渡所得税・住民税が課税されます。これらの税負担は決して軽くありません。 - 維持管理コスト
建物の修繕費、リフォーム費用、庭の手入れ、火災保険料、管理会社への委託費用など、不動産を維持するためのコストが継続的に発生します。 - 分割の難しさ
不動産は現金のように簡単に分割できないため、複数の相続人がいる場合、遺産分割協議が難航し、トラブルの原因となることがあります。
管理の手間と責任
空き家の場合でも、定期的な清掃や管理が必要です。放置すると建物の劣化が進んだり、不法投棄や放火のリスクが高まったりします。所有者としての管理責任も問われます。 - 売却・活用の困難性
立地条件が悪かったり、建物が老朽化していたりすると、売却や賃貸が困難になる場合があります。希望通りの価格で売れなかったり、借り手が見つからず空室が続いたりするリスクがあります。 - 負債の可能性
相続はプラスの財産だけでなく、ローンなどのマイナスの財産(負債)も引き継ぐことになります。不動産に抵当権が設定されている場合など、注意が必要です。 - 精神的な負担
思い入れのある不動産の場合、売却や解体といった決断が精神的な負担となることがあります。
法的手続きの煩雑さ: 相続登記をはじめとする法的な手続きは複雑で、専門家のサポートが必要となる場合が多いです。
