はじめに
住宅ローンや借入金の返済が困難になった場合、最終的に自宅などの財産が「差し押さえ」られ、「競売」にかけられてしまう可能性があります。
しかし、そうなる前に対処する方法があります。
その代表的な方法が「任意売却」であり。その他にも競売を回避するための手段が存在します。
このガイドでは、差し押さえ、任意売却の具体的な進め方、リースバック、そして競売を回避するための方法について、分かりやすく解説します。
差し押さえと競売について
差し押さえとは
差し押さえとは、債務(借金など)の返済が滞った場合に、債権者(お金を貸した側)が法的な手続きを経て、債務者(お金を借りた側)の財産(給与、預金、不動産など)を強制的に換金し、債権の回収を図る手続きのことです。
不動産の差押から競売までの流れ

1.督促
金融機関から電話や書面(督促状)で支払いを求める連絡が来ます。

2.催告書・期限の利益損失
滞納が続くと(通常3~6ヶ月程度)、内容証明郵便などで「催告書」が届き、「期限の利益」を喪失した旨の通知が送られます。「期限の利益」とは分割で返済できる権利のことで、これを失うと残額の一括返済を求められます。

3.代位弁済
保証会社を利用している場合、保証会社が債務者に代わって金融機関に残債を一括返済します。以降、債権者は保証会社に変わります。

4.競売申立て
債権者が裁判所に競売を申し立てます。

5.競売開始決定
裁判所が競売開始を決定し、その通知が債務者に届きます。物件調査(現況調査)なども行われます。

6.期間入札
裁判所が売却基準価額を定め、一定期間入札を受け付けます。

7.開札・売却許可決定
最も高い価格で入札した人が買受人と鳴り、裁判所が売却を許可します。

8.代金納付・所有権移転
買受人が代金を納付すると、不動産の所有権が移転します。

9.強制退去
買受人(新所有車)から立ち退きを求められ、応じない場合は強制的に退去させられます。
競売のデメリット

市場価格より安価
一般的に市場価格の5~7割程度で売却されることが多く、残債が多く残る可能性があります。

プライバシー
競売情報は公開されるため、近隣に事情を知られてしまう可能性があります。

強制的な立ち退き
売却後は速やかに立ち退く必要があり、引っ越し時期などの交渉はできません。

持ち出し費用
引越し費用等が考慮されない場合が多いです。
任意売却について
任意売却とは
(通常は抵当権が付いた状態の売却を債権者は許可してくれません。)
たとえ、売却代金でローンを完済できない場合でも、債権者の同意があれば抵当権を抹消してもらい、売却を進めることができます。
任意売却のメリット

市場価格に近い価格での売却
競売よりも高く売れる可能性が高く、残債をより多く減らすことができます。

プライバシーの保護
通常の不動産売却と同様に進められるため、近隣に事情を知られにくいです。

交渉の余地
引越し時期や、場合によっては売却代金から引越し費用の一部を捻出することなどを債権者と交渉できる可能性があります。

精神的な負担の軽減
強制的な競売と比べ、自身の意思で売却を進められるため、精神的な負担が少ないと言えます。
任意売却の流れと期間
1.金融機関への相談・現状把握
ローン返済が困難になったら、早めに金融機関に相談します。ローンの残高、不動産の査定相場などを把握します。
2.不動産会社への相談・査定
ローン返済が困難になったら、早めに金融機関に相談します。ローンの残高、不動産の査定相場などを把握します。
3.債権者の合意
不動産会社を通じて、債権者(抵当権を持つ全ての金融機関など)に任意売却の許可を求めます。売却価格や費用の配分案などを提示し、交渉します。
4. 媒介契約・売却活動
債権者の合意が得られたら、不動産会社と媒介契約を結び、通常の不動産と同様に販売活動を開始します。
5. 売買契約
購入希望者が見つかり、価格などの条件がまとまったら、再度債権者の最終的な同意を得た上で、売買契約を締結します。
6. 決済・引渡し
買主から売買代金を受け取り、ローンの一部返済、諸費用の支払い、抵当権の抹消手続きを行い、物件を引き渡します。
7. 残債務の返済
売却代金で完済できなかった残債務については、債権者と協議の上、分割払いなどで返済していくことになります。
任意売却の注意点

債権者の同意が必須
全ての債権者の同意がなければ進められません。

時間制限
競売手続きが進むと、任意売却ができなくなる可能性があります。早めの相談・行動が重要です。

連帯保証人・共有者の同意
連帯保証人や共有名義人がいる場合は、その全員の同意が必要です。

税金の滞納
税金を滞納し、不動産が差し押さえられている場合は、原則として任意売却はできません。

不動産会社選び
任意売却は専門的な知識と交渉力が必要です。実績のある信頼できる不動産会社を選ぶことが成功の鍵です。
リースバックについて
リースバックとは?
まとまった資金を調達しながらも、住み慣れた環境を変える必要がないため、老後資金の確保、事業資金の調達、住宅ローンの返済、相続対策など、様々な目的で利用されています。
(※よくリースバックと混同されるリバースモーゲージについてはこちらをご参照ください)
メリット
住み慣れた家に住み続けられる
まとまった資金を早期に調達できる
不動産を売却することで、比較的短期間でまとまった現金を得ることができます。
資金使途が自由
売却で得た資金の使い道は基本的に自由です(住宅ローンの残債がある場合は返済に充てることが一般的です)。
固定資産税などの維持費が不要になる
不動産の所有者ではなくなるため、固定資産税や都市計画税の支払い義務がなくなります。マンションの場合は管理費や修繕積立金も不要になります。
相続対策になる場合がある
不動産を現金化することで、相続時の遺産分割が容易になる場合があります。
売却したことを周囲に知られにくい
通常の不動産売却と異なり、販売活動を行わないため、近隣に売却の事実を知られにくいです。
デメリット
売却価格が市場価格より安くなる傾向
一般的に、通常の仲介による売却価格相場の6~8割程度になることが多いと言われています。少しでも高く売りたい場合には不向きです。
家賃が発生し、相場より高くなる可能性
所有者ではなくなるため、毎月家賃の支払いが発生します。家賃設定は売却価格との兼ね合いで決まることが多く、周辺の家賃相場より高くなるケースがあります。
所有権を失う
当然ながら、不動産の所有権は買主に移ります。将来的に資産価値が上昇しても、その恩恵は受けられません。
賃貸借契約の種類に注意(定期借家契約のリスク)
家賃滞納による退去リスク
家賃の支払いが滞ると、賃貸借契約を解除され、退去を求められる可能性があります。
再購入(買戻し)ができない、または高額になる可能性
将来的に家を買い戻したいと考えていても、契約に買戻し特約がない場合があります。特約があっても、買戻し価格が売却価格よりも高く設定されることが一般的です。
契約内容が複雑
売買契約と賃貸借契約を同時に結ぶため、契約内容が複雑になりがちです。専門家(弁護士など)に相談することも検討しましょう。
悪質な業者に注意
「家賃が不当に高い」「買戻し価格が高すぎる」「不利な契約内容になっている」といったトラブルも報告されています。信頼できる会社を慎重に選ぶことが重要です。
メリット・デメリットを十分に理解し、複数の会社から話を聞き、契約内容は細部まで確認することが重要です。必要であれば、弁護士などの専門家にも相談し、ご自身の状況にとって最適な選択肢かどうかを判断しましょう。
競売を回避するその他の方法
任意売却以外にも回避する方法があります

債権者との交渉(リスケジュール)
金融機関に相談し、返済計画の見直し(返済期間の延長、一時的な返済額の減額など)を交渉します。返済の意思を示すことが重要です。

個人再生
裁判所に申し立て、借金を大幅に減額してもらい、原則3~5年で分割返済する手続きです。住宅ローン特則を利用すれば、家を手放さずに済む可能性があります。

自己破産
裁判所に申し立て、借金の支払い義務を免除してもらう手続きです。不動産などの高価な財産は原則として手放すことになりますが、生活必需品などは残せます。最終手段として検討されます。

一括返済
親族からの援助などで借金を一括返済できれば、差し押さえや競売は回避できます。
